コールセンター開設までのステップ
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コールセンターを立ち上げる時には、運営方法などさまざまな手順を踏む必要があります。想定するセンター規模により必要な設備やオペレーターの人数も異なり、外注するのか自社で構築するのかが変わります。新規契約の獲得や商品サービスの周知が目的であれば、自社で新たにコールセンターを立ち上げるよりも、短期間の契約でアウトソーシングしたほうがいい場合もあります。この場合はアウトバウンドです。
または、顧客からさまざまな問い合わせを受ける窓口としてコールセンターを立ち上げたいのであれば、自製し継続的に運営していくことが、長期的には費用を抑えられるとともに企業の成長戦略に活かすことができます。この場合はインバウンドです。
企業の目的によっては、外注することもできます。自社の目的を明確にすることから始めましょう。 今回はコールセンターを立ち上げる時の手順や必要な費用、注意すべきポイントについて説明していきます。
コールセンター立ち上げのステップ
1.コールセンターの目的を決める
コールセンターを立ち上げるにあたり、企業の目的、方針に沿ったKGI(Key Goal Indicator)つまりコールセンターの目的、コンセプトを決めることが重要となります。コールセンターを設置することで実現したい最終的なゴールを明確にします。
企業の方向性に沿った「顧客満足度の向上」「売り上げの獲得」などの目標を立てます。目標を掲げることで、上層部だけではなく、コールセンター内の全スタッフに共有することができます。明確なゴールがないと、目指すものがあいまいとなり、頻繁に運営方針が変わってしまうこともあります。
近年、コールセンターは単なる問い合わせ窓口ではなく、企業にとって顧客とつながるための重要な接点と考えられるようになりました。コールセンターの応対品質によって、顧客から企業へ抱くイメージが変化し、顧客満足度やロイヤリティに大きく関わるという認識に変わってきました。
そのためにも、KGIを明確化することで全スタッフに共通認識が生まれ、結果としてモチベーションの継続につながり、顧客満足度が向上していきます。2.現状の調査、問題点の抽出
明確な目標が決まったら、企業の現状の把握と問題点の洗い出しを行います。既存のコールセンターの有無や外部からの問い合わせに対して回答している部署が企業内にあるはずです。下記の5つのポイントに分け、それぞれの状況を可視化するといいでしょう。
- 運用プロセス
- 管理体制
- 組織体制
- 教育体制
- システム関連
また課題を発見するときには、求めるゴール、成果から逆算することも有効な手法です。例えば「高品質なコールセンターで顧客満足度を上げる」という目標だった場合、下記のような課題が考えられます。
- お客様をお待たせしないための人員
- 高品質な対応ができる教育体制
- 顧客対応をスムーズに行うシステムの導入
これらの点について課題や問題点を調査し、前項で定めた目標を達成するためには何か不足しているのかを洗い出していきます。
3.業務プロセスの設計
続いて実際にコールセンターを立ち上げた後に想定されるさまざまなプロセスを洗い出します。例えば必要なスタッフの人員、マニュアル作成、研修のフロー、業務フローや定期報告の方法など想定できることは細部に至るまで検討し、必要な業務内容や設備、システム、人員を設計します。設計にあたっては4つの項目に分類して設定していきましょう。
業務プロセスを明確にする
コールセンターに求められている機能を明確にし、どのような作業をどのようなプロセスで運営していくのかを整理します。具体的には下記のような問題があります。
- マネジメントするべきKGI
- 体制と組織図の明確化
- オペレーターの業務フロー
- 履歴の管理方法
- 定期報告内容と方法
- 緊急連絡網の整備
- 緊急事態発生時の運用方法(BCP対策)
管理(マネージメント)方法を明確にする
業務プロセスが決まったら、適正な状態にするための管理方法を確認していきます。細部にわたって決められた業務プロセスでも、決められた通りに運営できていなければ成果を発揮することができません。その場合は、業務プロセスを見直すことも必要となります。判断材料とするためにもマネジメント方法を明確にすることは重要なステップです。
マネジメント方法を決める時には、<1、コールセンターの目的を決める>で決められたゴールを達成するための明確な数値を設定することが大切です。例えば、放棄呼率や電話の処理時間、対応件数、成約率、クレーム率などの数値を設定し、どのような方法で管理を行うのかを決定します。
具体的なKPIとその目標値を設定し、コールセンター全体で共有することにより、目標達成までのマネジメント方法も明確になります。
構築に必要な工数算出と組織体制を明確にする
業務プロセスとマネジメント方法が決まったら、構築に必要な工数を算出し、対応できる組織体制を定めていきます。コールセンターを運用していくうえで、人材が重要なポイントとなります。どのような業務をどのくらいの規模でどの程度の人員が必要かを割り出していきます。予め決められたコールセンターのゴールを達成できるような組織体制、人員が見えてくるでしょう。 小規模なコールセンターの開設を目指しているなら、数人程度のスタッフで創設することもできますが、顧客満足度を上げるために大規模なコールセンターを考えているのならばコストだけではなく、人材の採用教育といった課題も出てくるでしょう。
人材育成
優秀なスタッフが在籍していることがコールセンターの品質を決めると言っても過言ではありません。コールセンターの対応品質を上げるには、優秀なスタッフを確保することが重要な課題となります。スタッフの採用と同時に教育体制とサポートも優秀なスタッフが在籍するポイントです。
優秀な人材を確保することはどの企業でも頭を悩ませる課題となっています。特にコールセンターは離職率が高いと言われている職種です。人材育成とともに、せっかく採用した人材が早期離職してしまわないよう、安心して長く働き続けることができる環境を整えることが求められています。
初期研修で優秀な人材を育てても、「覚えることが多い」「自分には向いていない」という理由で将来活躍してくれるスタッフが辞めてしまうのは避けたいところです。どのように教育、育成していくのかを明確にしましょう。
4.構築、実装
続いては、ここまで設計した内容を構築し、実装していきます。構築する内容は「システム」「業務運用」「教育体制」の3つで進めてきます。
システム
コールセンターを運用するためには下記のようなインフラ設備、システムが必要となります。
電話(PBX)の設置
電話回線やインカムはコールセンターにおいて必須となります。事前アナウンスや通話録音などの必要な設定を行いましょう。またPBX(構内交換機)でお客様からの電話を適切に振り分けることができます。業務時間外などオペレーターが対応出来ないコールを振り分けることができるので、必須と言えるでしょう。
より高いオペレーションを目指すならCTI(パソコンと電話やFAXを連動させるシステム)を導入することで、お客様をお待たせしない、オペレーターにとってもストレスが少ない環境を作れます。
ネットワークの設計
自社のネットワークとコールセンターのネットワークを連携させます。 またコールセンターでは顧客の個人情報を扱うため、ネットワークセキュリティポリシーに照らし合わせて、万全なセキュリティ対策を講じましょう。
施設の準備
コールセンターの場所、オペレーターの席数、会議室、電話配線などセンターのレイアウトを協議し、施設を準備します。備品等の用意もしておきましょう。
業務運用
次は実際にどのように業務を行うのか、業務運用ルールを決めていきます。前項の業務プロセスで明確になった項目に必要なマニュアルやオペレーターのシフトパターンを作成していきます。下記を参考にしてください。
- 業務マニュアル
- 商品、サービスに関するマニュアル
- 機材やシステム操作マニュアル
- クレームや緊急時の対応マニュアル
- 電話対応トークスクリプト
- 管理者へのエスカレーション時のマニュアル
- 管理マニュアル
- 管理者用システムマニュアル
- 人材マネージメントマニュアル(シフト、KPI)
- 品質管理マニュアル
各項目のマニュアルを作成することでオペレーターと管理者側で共通認識が生まれ、コールセンターを統一することができます。
教育体制
続いてスタッフの採用、教育を行います。前項で明確にした組織体制を基に、必要な人員の採用活動を行っていきます。役割分担を考え、チーム単位で必要な人数を割り出し、募集を行います。すでに企業内にコールセンターに相当する部署があった場合は、異動なども考慮します。
採用後は設計していた初期研修を実装していきます。オペレーター一人ひとりがコールセンターに必要な知識を身に着けられるよう進捗を確認しながら、教育していきます。研修内容は下記のような研修が挙げられます。
- 情報セキュリティ研修
- 応対品質向上研修
- 業務研修
- OJT
- スキルアップ研修
- 管理者用研修
コールセンター立ち上げにかかる費用
ここまでコールセンター立ち上げに必要な項目を挙げてきましたが、実際にどのくらいコストがかかるのか気になるところです。続いてはコールセンター立ち上げに必要な費用に要して案内していきます。
初期費用
コールセンターに必要な初期費用は、規模によってかなり異なります。主に「システム導入費(PBXやCTI)」「機材代や通信費」「ネットワークや電話回線の工事費」など相場で20~300万程度かかります。独自のシステムを構築する場合は開発費用やライセンス料などが別途かかります。施設を新たに用意する場合は、契約料や賃料も考慮しましょう。
維持費用
システム利用料や通信費、メンテナンス、保守費も日々の維持費にかかってきます。導入するシステムによって異なりますが、相場で3~20万かかります。特にPBXやCTIは保守費用が高額である場合が多いので、注意が必要です。
人件費
コールセンターでかかる費用のうち、人件費が最も占める割合が大きいです。毎月の採用コストは広告掲載費が5~20万円かかります。採用後、面接対応の人件費や研修費用は相場1人あたり3万円~となっています。一般的なオペレーターの時給の相場は1200~3000円が相場です。
まとめ
これまでコールセンターの立ち上げステップや費用について説明してきました。設計から構築、業務開始まで多くの作業、コストがかかります。その他、管理や採用、人材教育など数多くの課題が待ち構えています。 社内だけで運用開始することに懸念がある場合は、委託することもおすすめします。多くの企業ではコールセンター業務をアウトソーシングすることで、コールセンターを開設しています。作業やコストを抑えることで、早期にコールセンターを立ち上げることが可能となります。
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