コールセンターにおける理想の研修とは

  • 様々な企業でコールセンターが設置されていますが、CX(顧客体験価値)を上げることを目的として設置している企業がほとんどでしょう。企業の中で、コールセンターは顧客との距離が最も近い部署です。在籍しているオペレーターのスキルがコールセンターの品質を決めると言っても過言ではありません。

    『コールセンター白書2019』によると、離職率が年30%を超える企業は38.2%。翌年は同28.8%と9.4ポイントも減少しているが、それでもまだまだ高い水準であります。ベテランから新人までオペレーターのスキルを維持するには、新人研修が大きな鍵となってきます。 今回はコールセンターにおける研修の重要性や研修の理想の形について、ご紹介します。是非、参考にしてください。

    研修が重要である理由

    CX(顧客体験価値)を上げるため

    受電(インバウンド)でも発信(アウトバウンド)であっても、コールセンターへは日々商品やサービスに係るさまざまな電話がかかってきたり、かけることがあります。多くの問い合わせに対して適切な判断と丁寧で質の高い対応が求められます。マニュアル通りではない対応を求められることもあるでしょう。オペレーターが顧客に満足してもらえる対応を行ったときに、顧客が企業のファンになってくれる可能性を秘めています。研修を行うことで新人オペレーターであってもワンランク上の判断能力と高度な電話応対スキルを身に付けることが出来ます。

    離職率が下がるため

    冒頭でもお伝えした通り、コールセンターの離職率は比較的高い傾向であります。離職理由として、「クレームによるストレス」「覚えることが多い」「ノルマがきつい」「研修などのサポートが少ない」などが挙げられます。理想的な研修を行うことで、このような離職理由を多少なり緩和することが可能でしょう。

    また受電(インバウンド)では電話をとるまで、その電話の内容を知ることはできません。初めて電話を取る新人でも顧客とスムーズな対応ができるように研修を進める必要があります。ベテランでも新人オペレーターでも変わらない品質を維持するためにも研修を通して、新人オペレーターが落ち着いて業務に臨める環境を整えることができるでしょう。

    業務の効率化を図るため

    コールセンターでは1日に多くの電話がかかってきます。研修を行うことでオペレーターの商品やサービスに関する知識を一定のレベルにあげることができるので、スムーズに顧客に対応することができるでしょう。

    また研修プログラムを確立することで、研修を行うSV(スーパーバイザー)によって異なる内容になるということを防ぐことができます。研修内容が違えば、オペレーターによってスキル差が生じてしまいますので、個人スキルを把握するだけでも行うべき業務が増えてしまいます。統一の研修プログラムが確立できれば、教える側が研修に向けて準備する時間を減らすことができるので、業務の効率化が図れるでしょう。

    研修の理想の形とは?

    コールセンターでは、新人研修を行うことが重要とお伝えしましたが、それでは研修の理想の形とはどんな内容でしょうか。 研修のゴールは「研修を受けたオペレーターが高いスキルを発揮し、顧客対応することでCX(顧客体験価値)を上げること」、「オペレーターのモチベーションを上げ、会社のファンになってもらうこと」です。

    研修を通して、新人でも一定以上の知識を持つためには相応の時間とコストがかかります。中には「いつ辞めるかわからないオペレーターの教育に時間をかけたくない!」と考えている企業様もいらっしゃるでしょう。 新人研修では最初に会社の理念、センターのミッションを伝えることが大事です。すぐに率先力になるようにと言って、説明を省いていないでしょうか。会社の方針やセンターの目指すべきことを理解することで日々の仕事が単純作業ではなくなり、会社のファンになることで顧客にも誠意ある対応することができるようになります。新人オペレーターと会社の間に信頼関係も生まれ、オペレーターの知識定着、職場への定着率も高まっていきます。

    研修の流れ

    実際に新人研修の流れを以下に記します。

    • 座学
    • モニタリング
    • ロールプレイング
    • OJT
    • デビュー

    デビューして独り立ちするまでの新人研修の流れを重要なポイントと共に抑えるべき項目を具体的に確認していきましょう。

    座学

    座学研修ではマニュアルを使用し、インプットの研修を行っていきます。ですが、講師が一方的に話をしては、覚えることは難しいです。対話やディスカッションなどの体験を通して、自ら求める回答を出せるよう導くことで記憶が鮮明に残るでしょう。使用するマニュアルはすでに最新の情報であるかを確認することも重要です。コールセンターでは日々新しい情報が入ってきます。マニュアルと実際に対応したときに相違があれば混乱がおきます。

    座学研修において3つの抑えるべきポイントがあります。

    会社概要・ミッションの共有

    先述でお伝えしたように、まず企業理念を共有し、共感を得ることで「この会社のために働いている」という帰属意識が高まり、結果的に働くモチベーションの向上に繋がります。 オペレーターは会社にとって「組織の顔」であります。誠意をもってお客様に対応するために会社の概要やミッションの共有が重要となります。

    商品・サービスへの理解

    コールセンターで最も多く受ける電話の内容が商品やサービスに関する質問です。応対中もマニュアルの確認ができるとはいえ、お客様は迅速な対応を求めています。実際の応対で困らないように基本的な内容を理解することが重要です。

    また必要な知識が多い場合、覚えきれないことがあります。その時にはマニュアルのどこを探したらいいかなど、調べ方を教えることも抑えるべきポイントとなります。

    基本的な電話応対のスキル

    座学研修を受ける新人には今まで電話応対の経験がない方もいるでしょう。電話応対は声だけで相手の意図を読み取り、こちらの対応に納得してもらう必要がある特殊な仕事です。非常に難易度が高く、電話のマナーや丁寧な言葉遣いなどを学ぶことも重要となります。 正しい言葉遣いや丁寧な応対姿勢によりお客様満足度を高めることができます。

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    モニタリング

    座学でインプットしたあとはモニタリングを行います。座学だけでは理解できないことを補うことができます。先輩オペレーターの対応方法を実践の前に聞くことで、会話のペースや実際に起こる場面を想像することができます。難しい問い合わせに対しても、目指すべき対応方法が明確化され、安心して臨むことができるでしょう。

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    ロールプレイング

    ロールプレイングでは座学やモニタリングでインプットしたことをアウトプットしてもらうことが目的です。 トークスクリプトを使って、二人一組になって演習を行います。可能ならば、実際の機器を使って行うのがベストです。ロールプレイングでは現状で、商品知識が不足しているのか、接客マナーができていないのか、など講師は一人ひとりにフィードバックしていきましょう。そうすることで、新人オペレーターがお客様の対応を行う前に弱点はどこなのかをきちんと見極めることが可能になります。 またクレーム対応に関しても事前に対応しておけば、安心して実務に臨むことができます。

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    OJT

    OJT(On the Job Training)では実際にお客様からの電話の応対を行います。すぐそばに研修内容を理解した「トレーナー」がつき、新人オペレーターの対応を確認します。研修でインプットしたものを効果的にアウトプットできているかを確認することが目的です。未熟な部分については研修内容に戻り、どこが足りていないのかフィードバックすることが効果的です。 最初のうちは慌てて、保留にしても、少しずつオペレーター自身で解決方法を出せるよう導いていきましょう。

    フォローアップが必要

    晴れて研修が終われば、デビューとなります。オペレーター、講師ともにデビューは嬉しいことですが、これで完璧に対応ができるかといえば、残念ながらそうではありません。初期研修が終わったからと言って放任するのではなく、定期的にフォローアップ研修や面談の場を設け、対応スキルやオペレーターのモチベーションを維持していく必要があります。

    いざデビューしてみると対応やクレームの多さに疲弊してしまう方もいるでしょう。日誌やミーティングでコミュニケーションをとる場を設けましょう。各リーダーがオペレーターの仕事の進捗が確認できるような環境を整えることが求められます。

    まとめ

    「コールセンターにおける理想の研修とは」をテーマにコールセンターでの研修の重要性や研修の流れについて説明してきました。 電話をかけてきたお客様は対応しているオペレーターが研修中かどうかは知りません。研修中だからと言って、会社の品質を落とすような対応であってはいけません。 あらかじめ、品質が保てているかを確認し、具体的に以下の2点について心がけておきましょう。

    • OJTまでに最低限達成していなければいけない項目をピックアップし、合格者のみOJTに進める。
    • オペレーターが対応できない場合の引継ぎ方法を決めておく。(保留にする、折り返しかけるなど)

    コールセンターは「会社の顔」として、最もお客様の声を間近で聞けるチャンスがあります。また成果がはっきりしている仕事を言えるでしょう。 研修を通して、講師側もコールセンターの改善点が見えてくるはずです。 研修を行うには、時間も費用も掛かりますが、オペレーターが長期的に仕事を継続できる研修方法でサポートしていきましょう。