コールセンターの品質をあげるには

  • 「会社の顔」の役割として、企業とお客様をつないでいるコールセンター。コールセンターの品質は顧客満足度の向上だけではなく、企業のイメージや売り上げにも直結しています。

    しかしコールセンターの現場では応対品質や管理方法、その指標に悩まれていることが多いのではないでしょうか。コールセンターの品質向上のためには、抜本的な解決が必要不可欠です。 今回は、コールセンターの品質管理にあたっての課題解決と目指すべき管理方法や指標に関して紹介していきます。

    コールセンターの品質とは

    コールセンターの品質と言っても、一つで管理できる内容ではありません。今回は目的を「顧客満足度を上げるため」としたときに、どのような視点でコールセンターの品質を測るかを考えていきます。

    顧客満足度とは、企業の商品やサービスに対して顧客がどの程度満足しているか、の度合いを示す言葉です。英語では「customer satisfaction(カスタマー・サティスファクション)」と表現されるため、「CS」と略すことも多い言葉です。顧客満足度の上下には、顧客が商品やサービスに対して持っている期待値が大きく関係していると言われます。

    今回はお客さまがコールセンターに電話を掛けたり、コールセンターから電話を掛けた時に、顧客満足度をいかにあげられるか、顧客体験が向上できたかという切り口で案内します。

    1. パフォーマンス

    お客様がコールセンターへ電話するときにまず懸念材料になるのが、繋がるかです。いくらコミュニケーションスキルに長けたスタッフがいて、お客様対応がよくても、お客様にとって繋がらなければ会話する機会すらないという最悪な事態が出来上がります。せっかくコールセンターがあっても繋がらないようでは、顧客満足度を下げる大きな要因となります。

    • CPH(Call Per Hour):1時間あたりの対応件数
    • ATT(Average Talk Time):1コールで必要となる平均通話時間
    • ACW(After Call Work):オペレーターが通話終了後に行っている作業時間の平均
    • AHT(Average Handling Time):オペレーターの通話開始から後処理完了までに発生する対応の平均処理時間(※ATT+ACW=AHT)

    これらの数値はコールセンターが効果的に稼働出来ているかを測ることができる数値です。

    またコールセンターに在籍しているスタッフの管理も「繋がらないコールセンター」ができる要因に大きくかかわってきます。

    • 必要なスタッフの人員は揃っているか
    • スタッフの研修制度は充分に実施できているか
    • スタッフの離職率は高くないか

    CPH等の数値と担当するスタッフを管理することは複雑に絡んでいます。コールセンターの管理者には、これらの数値の管理と人材管理することで放棄呼率(お客様からの電話がオペレーターに繋がる前に切れてしまう割合を表したもの)を減らすことが求められます。 費用面でもコールセンターのパフォーマンスをあげつつ、費用対効果を考える必要があります。CPH等の数値を上げるために人員を多く配置しても利益が上がりません。適切に人材を配置しなければなりません。

    2. クオリティー

    コールセンターが繋がるようになれば、次にお客様に求められるのは応対のクオリティーです。電話がすぐに繋がればいいというわけではなく、お客様が困っている内容に対して解決することが求められます。

    コールセンターに求められるクオリティーには応対品質と解決能力があります。 応対品質を測る指標にはどんなものがあるか紹介していきます。

    • 顧客の要望やニーズに対応ができたか
    • マニュアルやトークスクリプト通りの対応ができたか
    • 電話応対時の言葉使いは適切だったか
    • 自社商品やサービスの知識は十分に備わっているか

    応対品質を測る指標はさまざまありますが、このような基準を重視することで顧客からの問い合わせに適切に対応出来ているかを測ることができます。

    応対品質を測る方法としてはモニタリング(顧客とオペレーターとのやり取りを一部始終記録すること) のほか、調査会社の担当者などが外部の顧客を装って応対をチェックする「ミステリーコール」を行うこともできます。また、外部の専門業者による「応対品質評価サービス」も活用できるでしょう。スキルが高いコールセンターならば必ず実施している施策です。 ただし、1年に1回程度の実施では課題点は解決されないでしょう。毎週、毎月どのようなシステムでモニタリングを行うのかを定め、定期的に実施することが大切です。評価と改善点を明確にし、定期的にオペレーターへフィードバックし、評価にもとづいたトレーニングを行うとよいでしょう。フィードバックだけで終わるのではなく、実際のトレーニングにつなげることで、応対品質の是正へとつながります。

    次に解決能力を測る指標にどんな内容があるか紹介していきます。

    • 一次解決率:顧客からの入電で解決した割合
    • ありがとう率:対応における顧客が感謝の意を伝えた割合
    • クレーム率:対応において顧客が「クレーム(ご指摘)」を発した割合

    これらの指標で顧客からかかってきた内容に対して、正しく解決できたかを測ることができます。

    コールセンターにはお客様からさまざまな内容の電話がかかってきます。電話を取るまでは電話の内容がどんな問い合わせかわかりません。オペレーターにはどんな電話がかかってきても適切に対応することが求められます。お客様は電話に対応したオペレーターが新人かベテランかわかりません。しかし、一様にプロとしての対応が必要となります。

    新人でもベテランのオペレーターでも同様に受け答えができるよう、マニュアルや質問事項をリスト化することが必要不可欠です。経験の浅いオペレーターでもすぐ対応できるよう準備しておくことが、コールセンターの評判や品質を落とさないカギとなります。

    品質の測定方法

    コールセンターの品質管理を行うときに、測定方法や評価方法があいまいになってしまい、主観になってしまうと考えている方も多いのではないでしょうか。測定方法には外部評価と内部評価の2種類があります。

    • 外部評価:HDI-Japan、J.D.Powerのような調査を専門としている第三者機関に依頼して評価してもらう方法。
    • 内部評価:コールセンターを運営している自社で、指標を定めます。スタッフがそれらの指標に対して業務を遂行できているかを数値化することで評価する方法です。

    これまでコールセンターの品質管理方法など説明してきましたが、顧客満足度を上げるためにコールセンターの品質管理を実践したくても、現場ではなかなか一歩進めないという現実があります。その理由を解説していきます。

    「顧客満足度」が数値化しにくいところ

    ゴールとして目指すべき「顧客満足度の向上」が抽象的で、数値として取得することが難しいことが挙げられます。一般的には、満足度の確認方法はアンケートがありますが、コールセンターを運営している企業で結果を取得することは現実的ではないでしょう。

    品質向上の指標を作ることが難しい

    「品質の向上」とは究極のサービスを提供しているので、品質に関する価値観や評価するポイントがメンバーごとに違っていることがあり得ます。その価値観をすり合わせていくことに非常に時間と手間がかかる仕事であります。

    品質向上と利益が相反するもの

    例えば「電話を取る量を増やせば、放棄呼率は下がり、電話がつながりやすくなる」と「丁寧で気配りが行き届いた応対品質」を目指したときに矛盾が生じることがあります。あいさつやマナーを意識して、顧客に寄り添ったコミュニケーションを重要視した場合、1件の電話に時間がかかってしまい、電話が繋がらないことが増えてしまいます。電話がつながるようにオペレーター数を増やしても利益に相反するでしょう。

    コールセンターの品質管理には、人的にも、時間的にも、金銭面でも非常にコストがかかることだと考えています。また管理指標には明確な統一項目がなく、各センターの管理者や第三者機関が試行錯誤をしている状況です。 しかし、コールセンターの品質管理は、優良顧客の獲得や企業評価を維持・向上するために必要不可欠です。長期的に利益を生むためにも品質管理を始めてみましょう。自社で調査する場合でも、第三者機関に依頼する場合でも、モニタリングすることから始まります。 定期的にモニタリングを実施し、オペレーターへフィードバックしていくことから始めましょう。現場での声を聴きながら、目指すべき指標が見つかることもあるでしょう。